脳と運動
運動は脳によい??
運動は医者からよく勧められますが、日本の方はあまり運動には関心がないようです。私は若い時によく欧米に行っていましたが、外国では朝から男女ペアでよくジョッギング、あるいは散歩(時にはお手つないで)している、結構老夫婦の姿を拝見しました。
日本ではどうでしょうか。大濠公園、皇居周辺では結構運動する人たちの姿を拝見しますが、一般にはあまり、です。
さて、運動は何となく体にいいらしいというのは大抵の方は御存知ですが、その理由となると、さあ、が本当ではないでしょうか。
実は、専門家のはずの医師もよく知りません。大学の講義で運動の効能を聞いた記憶はほとんどありません。
なぜ運動はからだにいいのか?
実は体にいいのはもちろんですが、
糖尿病、高血圧、高脂血症、心臓病、肥満などに運動はいいですよね。
今回はそれらの分野は内科、代謝の専門医に任せて、私は、運動は脳にいいというお話をいたします。
プラトン曰く
人生において成功するために、神は人にふたつの手段を与えた。この二つの手段によって、人は完璧な存在となる。別々にではない。
両者がそろってである。
運動すると気分がすっきりする。それは当然だが、なぜ?
ストレスが解消されるから、筋肉の緊張が和らぐから、あるいは脳内物質のエンドルフィンが増えるから、と大抵の人は考えている。
でも、本当は、運動で爽快な気分になるのは、心臓から血液がさかんに送り出され、脳がベストの状態になるから。
ここが本質で、筋力や心肺機能を高めることは、むしろ運動の副次的な効果に過ぎない。
運動は実は、脳を育ててよい状態に保つためだということ。
出典
ジョン・J・レテイ 訳 野中香方子 NHK出版
以上をジョン博士述べている。
上に紹介した彼の本は素晴らしい。彼はアメリカで有名な脳の専門家、全米の医師ベスト10に選ばれたこともある有名な医師で、誰よりも脳と運動の関係を知っており、それに文才があり、その文章は実にわかりやすい。脳は非常に複雑であり、私はその専門家の端くれだが、彼は脳の機能と運動の関連を実にわかりやすく述べている。
私は今、彼の本を非常に興奮して読んでいる。今後、その内容を数回に分けて述べていく予定である。
私は日頃から皆さんに呼吸法、気功、ヨガ、エアロビクス、ストレッチ、ダンベル体操、散歩、(ジョギング)、いい睡眠、食事療法などを勧めてきた。
彼は嬉しい事に運動、その中でもエアロをすすめている。
彼は進化論の立場からいう。
人間はもともと狩猟採集生活をしていたので、絶えず変化する環境に適応するために身体能力を磨き、思考する脳を進化させてきた。人間の脳の回路には、食物と体の活動と学習をつなげるものがもともと組み込まれている。現代人はどうだろう。狩りも採集もしていない。動くことの少ない現代人の生活は人間本来の性質を壊し、人類という種の存続を根底から脅かしている。例として、アメリカの65%は肥満、10%はⅡ型糖尿病を患っている。運動不足と栄養の偏りが原因である。今では若い人にも広がっている。これは他の先進国でも広がりつつある。動かない生活は脳を殺す、実際、脳は縮んでいる。
彼の言うように、体と脳は実は密接な関係にある。これを今から紹介していく。
運動するとなぜ脳はよくなるのか?
それはラットで計測し、人間において確認した事実である。
運動をすると セロトニン、アドレナリン、ド-パミン
(これらは思考や感情と密接な関係にある神経伝達物質)が増える、これはよく知られている。また、セロトニンの不足はうつ病と関係あることは知られている。しかし、それ以上のことを知っている人は、精神科医でさえ少ない。
強いストレスを受けると脳の何十億というニュウロンの結合がむしばまれることや、うつの状態が長引くと脳の一部が萎縮してしまうこと、しかし、運動をすれば神経化学物質(神経伝達物質やニュウロンの成長や機能調節など様々な役割を担っている化学物質の総称)や成長因子がつぎつぎに放出されてこのプロセスを逆行させ、脳の基礎構造を物理的に強くできること、これらのことをほとんどの人(医師、精神科医師を含めて)はしらない。
実際のところ、脳のニュウロンの枝は運動によって生長し、新しい芽が多く出てきて、脳の機能がその根元から強化される。
運動は遺伝子そのものに影響を与えることがわかってきた。
後述
また、筋肉も脳と関係があることがわかってきた。筋肉運動をするとたんぱく質が作られ、血流に乗って脳にたどり着き、高次の脳機能(思考メカニズム)に重要な影響を果たすことがわかってきた。
インシュリン成長因子(IGF-1)や血管内皮成長因子(VEGF)などがある。
心と体の結びつき
以上はここ数年のことである。
脳はそもそも私たちのすべてを取り仕切っていると彼は言う
(唯脳論を彷彿とさせるが。私は脳がすべてという説には少し異論がある)
ニュウロンの道を作ることの大切さ。
脳の働きは多岐にわたるが、知覚、感情、意志、情報収集、
推論、判断、決心などなど それらは結局ニュウロンの働きによる。
外界、内界の情報をどれだけ吸収するかはニュウロンのつながりをつよくする神経化学物質と
成長因子のバランスが正しく保たれているかによる。運動はこれら
の重要な物質と因子に重要な影響を与えている。
」
令和 2年3月15日 文責 脇元 安