双極性障害の症状
これにはⅠ型(躁状態)とⅡ型(軽躁状態)があります。躁とうつ相を繰り返す慢性の疾患です。Ⅱ型でうつ相の時、抗うつ薬を服用して躁転して問題になることがままあります。私は遺伝性がかなりあるのではと思っていますが、日本ではあまりそれは言われません。南方に多いです。うつ病は北に多いです。ドイツとか北欧とか、スコットランドとか。
臨床的には躁状態の時、本人は病気という自覚に乏しく、逸脱行為(多弁他動、夜寝ない、怒りっぽい、攻撃的、時に裁判に訴える)に反省が乏しく、社会的に問題にあることがままあります。ですから、時には強制的入院も必要になります。躁が落ち着いた後、我に返って意気消沈される姿は見る方も辛いときがあります。ですから、躁状態の時は治療をしっかり受けましょう。病気という意識を持つことが大切です。うつ相の時の対応は割愛します。うつ病コーナーを参照下さい。
治療は薬が中心となります。感情調整薬をベースにうつ相の時は抗うつ薬(躁転に注意)、躁状態の時は抗躁薬(時に強力安定剤)を併用します。不眠には眠剤、不安・いらいら時には精神安定剤が必要です。医師は精神科医が専門です。内科医には任せない方が安全です。感情調整薬には炭酸リチウム(リ-マス)、てんかん薬(カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)、クロナゼパム(ランドセン))があります。いずれも中毒に注意が必要で、定期的に血中濃度をモニターしながら服用する必要があります。命には別状ありませんので安心下さい。専門医にお任せ下さい。なお、再発防止ですが、結構難しいです。炭酸リチウムが再発防止に効果がある(効果50%?)とよく言われますが、実際は結構服用していても再発はあり得ます。もちろん服用していないよりは格段に防げます。再発防止は今後の課題のひとつです。病気のなりかけに早めに専門医に相談するのはいいことで、病気を小規模にする効果があります。
不眠について
不眠に悩む方が最近急増しています。10代でも結構あります。
不眠の治療ですが、我が国では睡眠薬が不安がられていて、あまり飲まれていません。癖になる、呆ける(全くの誤解)など言われ、睡眠薬を飲んでいると、怒る家族・知人さえいます。寝酒はよくないのに結構飲まれています。不眠は健康を損ないますので、治療が大切です。
医学的には睡眠は原因がよくわかっています。中脳、松果体の機能異常です。このために夜になると自然に分泌される睡眠物質(プロスタグランチン初めいろいろあります)の分泌が悪くなり、なかなか眠れない事になります。睡眠のリズムも乱れます。
睡眠はREM睡眠とノンREM睡眠にわかれ、合計90分の周期を一晩で4,5回繰り返しています。ノンREM睡眠は第1-4相まであり、特に3,4相は深い睡眠と関係があり、これがないと熟眠感がなくなり、大変です。REM睡眠は睡眠の相は浅いのですが(眼球をよく動かしています)良く夢を見ており、この時期が脳の安静に大切で、これが損なわれると寝た気がしなくなります。
不眠の原因は多くあります。仕事の関係(夜勤)、外国旅行、ストレス、病気(うつ病、統合失調症、心身症など)、薬など多岐にわたります。
治療ですが、薬(眠剤)、環境調整、基礎となる病気の治療などです。昼間太陽を浴びる、運動をする、入浴もいいです。
眠剤は多くの種類があります。最近多く使われる薬はベンゾデアゼピン系で副作用も少なく安全です。安心して飲んで下さい。精神科、心療内科が専門です。内科は専門ではありませんから要注意です。デパス、ハルシオンを安易に出す傾向があります。これらは依存が強く出ます。
高齢者の眠剤は要注意です、時にふらつきが出ます。ごく稀にせんもうなどの意識障害が出ることがあります。
時に漢方が有効です。西洋薬が不安な方は試してください。副作用はほとんどありません。
社交不安について
会議の場や駅、電車内、レストランなど他人が多くいる場で緊張する、あがる、冷や汗をかく、話せない、字がうまくかけないなどの症状がある方が最近問題になっています。これは社交不安といわれる心の病気の一つです。
従来は対人恐怖の一種と見なされ、会議恐怖、スピーチ恐怖などと個別に呼ばれていました。約20年前、米国で社会的場面で他人に不安を強く覚える方を社交不安と一括して呼ぶことが提唱されました。
この社交不安には抗うつ薬が特異的に効くことがわかって、最近俄然注目されています。
近年、この状態の方がこころのクリニックにかなり来院されるようになり、当院でも全体の約20%を占めます。薬は従来の抗不安薬に加え、抗うつ薬がより期待できます。
心当たりのある方は一度相談してみられてはいかがでしょうか。