DR 脇元の「安心」カウンセリング(一回目) 誰でも予備軍(復刻版)

DR 脇元の「安心」カウンセリング(一回目)
誰でも予備軍(復刻版)
身体の健康がいかに心の健康に支配されるか・・・・
だからこそ、安らかな心でありたいもの。そこで、心のプロフェッショナル・脇元 安ドクターへのインタビューをしました。
心が弱いからではなく、真面目だから心の悩みを抱えるのです。


Q 最近いわゆる「心」が原因の病気で職場を離れる人の話をよく耳にするのですが。

A 最近多いですね。ただ、日本ではメンタルな理由で不調になったら「あいつは心の弱いやつだ」と排除する傾向がありますが、それはかなりまずい。

Qえっ、心が弱いからではないんですか?

A 違います。あまりにストレスが多すぎるんですね。

Q つまり、ストレスに弱いわけですね?

A いや、弱いというよりまじめ、几帳面な人がかかるんですよ。だから、そういう人こそ企業としても大事にしてあげなければいけないんですね。いい加 減に働いている人はストレスでは病気になりませんから。

Q なるほど

A いらっしゃればすぐ解ります。あー真面目な人なんだな、「ノー」が言えない人なんだなと。

Q それが原因で体調が狂う?

A その通りです。しかし、原因がそれとは夢にも思いませんから、まずは一般科に行かれるんですね。
 胃が痛むから内科に行ったり、じんましんが出たからと皮膚科に行ったり、鼻の調子がおかしければ耳鼻科に行ったり・・・・しかし、異常がどこにも見 当たらない。それで、医者の方もぴんときて、「心療内科にでも行ってみませんか」と勧めるわけです。
 16人に一人がうつの時代!

Q 実際、他の科からそう言われて先生の医院を訪ねる患者さんは多いのですか?

A 抵抗があるのか、医師に言われて即来るというかたは半分以下ですね。しかし、カウンセリングに来られた方で「来るんじゃなかった」と思われる方はほとんどいらっしゃいません。「来てよかった」「話しを聴いていただいてよかった」とほとんどの方が おっしゃいます。

Q 話しを聴いていただけるわけですか? 

A はい、まずは聴くことが大事です。「聞く」ではなく、「聴く」ですね。傾聴です。そういう方にとって必要なのは、アドバイスではなく、聴いていただくことなのです。大体、フロイトもユングも有名な精神医学者は若いときに大いに悩んでいます。

Q そうでしたか。先生は患者さんの苦しみがよくお わかりになるということでしょうね。

A わかるように訓練を受け、自分なりに努力してきたということです。でも、まだまだとは思っています。慢心は戒めています。

Q それは頼もしい。

A 僕らが医学生時代はうつ病は200人に1人でしたが、今では16人に1人あるいはもっと増えているかもしれません。昔はほとんどなかった。子供の うつ病も 珍しくなくなりました。
 
カウンセリングはステイタスシンボル?

Q では私もストレスなどに負けないように、しっかり心を鍛えようと思います。

A いや・・・いくら心がしっかりしていても、それを上回るようなストレスに遭遇(そうぐう)したら誰でもなるんですよ。みんな予備軍なんですよ。

Q では、私も予備軍?

A そうですよ。ご存じのようにアメリカは最もカウンセリングが盛んな国ですが、たとえば政治家がお抱えの心理カウンセラーを持つことはもう「ステイタスシンボル」なんですよ。それをテーマにした映画があるんです。「アナライズミー」か。

Q ロバート・デニーロが扮するマフィアのボスが精神分析医に分析を受けていたが、途中怖がって逃げる医師を追いかけるという筋・・・・つまり、どんな人であれ、予備軍であるという意味で象徴的な映画でしたね。
ヒポクラテスの誓いで秘密主義。たとえ、警察から訊かれても秘密は話しません。

A 人は孤独なんですね。心を割って話しができる相手がいない。だから、カウンセリングが必要になってくるんですよ。

Q じゃ病気が癒やされながら孤独も癒やされるんですか?

A そうですね。「どこにも相談できる場所がなかったから」と来られる方も一部にはいらっしゃいますよ。

Q 話しを聴いて、分析しアドバイスする?

A いや、私たちが最も大切にしているのは傾聴(けいちょう)です。聴いたから、じゃアドバイス、というようならプロではないんですね。とにかく聴く、冷静に聴く。そして、心から共感する。同情ではなくて「共感」です。

Q うっかり、やばいことまで話してしまいそうですね。

A いや、その点はご安心ください。ヒポクラテスの
  誓いで秘密主義ですから、たとえ警察に訊かれようと、「娘はどんなことを話していますか」と母親から訊かれようとけっして話しません。
-続く-